PCO(ネズミ衛生害虫駆除業者)の方を講師に講演会が開かれた。その模様を抜粋しました。
屋内に侵入して問題となるネズミは、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの3種が圧倒的に多い。ドブネズミは下水や地面に穴を掘って侵入し、クマネズミは配線を伝わって天井に入り、ハツカネズミは物について侵入してくることが一般的に多い。食性は大雑把に分ければ、ドブネズミは肉食系、クマネズミは植物質系と言える。いずれも住宅地でのエサの供給源は厨芥類である。侵入口の大きさは、2.5cm以上あればそのままで、1cm以上あれば穴を入れるように大きくして侵入する。
ネズミ対策の基本は、侵入口を塞ぐこと。粘着シートで全数捕獲は無理。殺そ剤を使うことと併用して行う。殺そ剤はクマリン系が主体。急性毒は食いが悪く使いにくい。クマリン系でも食いが落ちたら、基材を変えると食いが良くなることがある。忌避剤は個体差があるので、100%の効果は期待できないが、鉄板で塞げないときは併用する。
◎天井裏を隠さない工法は良いと思う。しかし、ダクトに断熱材をかぶせることが多い。断熱材は、巣の材料になりやすいし、巣を作りやすいので、ないほうがよい。また、下から見えないダクトの上に2cmくらいの穴がある。穴がないように工事する必要がある。
◎屋内で喫食(食べ物を食べる)がない場合に毒エサで駆除できますか?
難しいでしょう。侵入口を塞ぐことを考えてください。増築箇所には穴ができやすいので、穴を見つけることが先決です。また、よそから来るといわれる場合でも、そこに住んでいることが結構あります。喫食がないと言われる場合でも、気がついていないだけで、下水の中、神棚の供え物、お菓子等を食べているケースは結構あります。
◎急性毒で忌避性の少ないものはありますか?
チューモアコンクという商品にワァルファリンの中にシリドシッドが添加されたものがある。これだとちょっと食いが悪い。それから考えればどれもダメでしょう。
◎粘着シートの置き方のコツを教えてください。
考えすぎてはダメ。ランダムに10枚置く方がかかりやすいようだ。結構動き回っているようだが、降りる場所は警戒しているようだと思う。天井裏にポンと置くと動き回っていのでかかる場合がある。
◎捕鼠カゴの設置のコツがあったら教えてください。
ドブネズミは多分入ると思う。エサは肉系がいいと思う。クマネズミはターゲットにするならエサはパンがよいが、すぐ腐るし、外れてしまうのが問題。そこの場所で食べられているエサがあるなら、それが良いとはよく言われている。
(注)大都市の住宅地のネズミ問題
@住民から寄せられるネズミの相談件数は、東京都・大阪府・福岡県だけで全国の8割以上を占め、大都市部で多い。東京都の4特別区、名古屋市、北九州市におけるネズミの相談件数の9年間の推移をみると全体的に増加傾向である。
A一般住宅地ではクマネズミが多いのか?
名古屋市では、1970〜1990年代に捕獲調査を行ない、クマネズミが12.9%から71.6%に増加している。一般にドブネズミは屋外・1階、クマネズミは天井裏と言われているが、東京都大田区の調査では、屋外でクマネズミ、天井裏でドブネズミが捕獲されている。
Bクマネズミは殺鼠剤が効かない?
従来、ビルのクマネズミは、薬剤に抵抗力を持ち、効かないことが実証されている。しかし、東京都大田区の調査では、住宅地のクマネズミも抵抗性を示した。これは、繁華街から分散してきたのではないかと推測されている。Cクマネズミの原産地は東南アジアで、日本にクマネズミが多いことは予想される。しかし、日本の都市部のクマネズミ問題は、日本の豊かな食生活から発生する残飯や厨芥がネズミの餌になっていると思われる。我々が、「ネズミを飼っている」と言えそうだ。
1.名古屋市のネズミ対策
名古屋市衛生局のネズミ対策は、毎年11・12月をネズミ駆除強調期間として、保健所や
生活衛生センターで毒餌作り講習会を開催したり、ポス夕一展示を行い、ネズミ駆除の普
及啓発を行っている。さらに,生活衛生センターでは,10月から3月までの期間、公共下
水道内に毒餌を投入して、ネズミ駆除を定期的(計画駆除)に実施している。
2.ネズミの相談件数
ネズミの市民相談は、全市で年間1,000 件前後寄せられ、
ネズミ衛生害虫相
談のべスト3に常に入っている。それだけ多くの市民がネズミに困っていることが伺える。
3.家住性ネズミの生息状況
本市では,一般住宅における全市的なネズミ調査を1971〜74年 (第1回目) と1979〜
82年 (第2回目)、1992年11月〜93年2月(第3回目) の3回実施している。その結果
(表1) をみると,家住性ネズミの種構成が変化し、クマネズミが多くなってきているこ
とが伺える。
表1 家住性ネズミの種構成
--------------------------------------------------------------------------------------- ドブネズミ クマネズミ ハツカネズミ 不 明 捕獲器種類
1971〜74年 86.9% 12.9% 0.2% 0.0% カゴ
1979〜82年 45.6% 38.0% 12.3% 4.1% カゴ,粘着トラップ,圧殺式捕獲器
1992〜93年 19.3% 71.6% 2.8% 6.4% カゴ,粘着トラップ
---------------------------------------------------------------------------------------
4.防そ構造工事による一般住宅のネズミ駆除について
現在、生活衛生センターでは,防そ構造工事による一般住宅のネズミ駆除調査を実施している。
この調査を実施することと
した背景は,ネズミの市民相談が年間1,000 件あり、市民が依然としてネズミに困ってい
ること、そのネズミの種類は,全市的に実施した家住性ネズミの生息状況調査の結果
(表1) から、クマネズミに変化してきているため,警戒心が強く、毒餌による駆除が困
難になってきていること等である。ネズミ駆除を指導していくためには、ネズミの通路
(穴)を塞ぐなどの環境的駆除がポイントとなる。
ビル等の大きな建築物については、防そ構造工事はすでにマニュアル化され、駆除専門
業者によって活用されているが、一般住宅では、手間や経費がかかること、さらには効
果がすぐに現れなかったり、技術的なノウハウが確立されていないため、効果の確認が
できなかったりしている。そのため、生活衛生センターでは,ネズミに困っている一般
住宅を対象として、ネズミの通賂を探し、そこを安価で簡単にできる防そ構造工事を試
していくことにより、効率的な防そ構造工事のノウハウのマニュアル化を目指している。
この調査は平成9年5月からスタートし、平成10年2月現在、23件の一般住宅を実施し
た。最初の数件は,ネズミ穴を探し出すコツがつかめなかったため,何度も足を運んで、
色々な場所の家具等を移動させ、穴を探さなければならなかった。この労力のわりには、
ネズミの被害がなかなか治まらず、大変苦労をした。しかしながら、何件か経験してい
くごとに,ネズミ穴を探すポイントや防そ構造工事のノウハウがつかめ,効果的に被害
を防ぐことができるようになってきた。さらに,調査件数を増やして、様々なケースに
対応していけるマニュアル作りを目指していく考えである。
また、防そ構造工事に使用した一方通行の防そ構造(一方からのみ の通行となる仕切構造)についても報告する。この一方通行の出入口を設けることによ り,室内に閉じこめられで死亡するネズミによる二次的被害を防止できるのではないか と期待している。このことから、毒餌が使用しづらい夏場でも実施できる駆除方法と考 えている。
5.最後に
防そ構造工事による一般住宅のネズミ駆除の調査件数を増やしていくごとに、経験が積
み重なり、ネズミ穴を見つけるコツがつかめてきた。外から進入路の例としては、通気
口の金網の破損部分や、ガス管や水道管の隙間、軒下の隙間なとかあった。今後は、さ
らに調査件数を増やして, 工事方法のマニュアルを作成し、ネズミの市民相談に積極的
に活用していきたいと考えている。
また, 今回調査した一般住宅での被害を起こしているネズミの種類は、ほとんどがク
マズミによるものと思われた。それでは、ドブネズミがいなくなったのかというと、
新たに、 中心部の公園内の植樹帯に住みつき, 住所不定者の食べ残しや鳩のエサなど
を食ベて、公園内を縦横無尽に走り回り, 新聞記事になるなどの問題になっている。生
活衛生センターでは、この公園内のネズミ対策も定期的に駆除している状況である。
名古屋市のネズミ対策と最近のネズミ事情を述べたが、ネズミが媒介する疾病につい
ても十分に念頭に入れ、今後ともネズミ駆除の啓発を実施していくことが必要であると
考える。
(ねずみ情報 No.49「ねずみ駆除協議会」より転載)
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