暮らしの中のダニ対策
−居住環境のダニ対策ガイドライン−



1.はじめに
 ダニは世界で6万種が記録され、わが国では1700種類が記録されています。
家屋内から検出されるダニは100 〜150 種類ですが、これは家屋内に生息しているダニ類と
家屋外から侵入してくるダニ類の合計です。
 このうち特に問題になるのは、家屋内に生息するヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ 
(チリダニ科)、ミナミツメダニ (ツメダニ科) と、家屋外から入ってくるイエダニ・トリ
サシダニ (オオサヒダニ科)、ワクモ・スズメサシダニ(ワクモ科)、人に寄生するヒゼン
ダニ (ヒゼンダニ科) です。

2.ダニが居住環塊で問題になる理由
(1) ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニ
 ヤケヒョウヒダニ・コナヒョウヒダニはアレルギーの原因物質 (アレルゲン) になります。
 アレルギー疾患は、3人に1人の罹患率と言われるほどで、特にアレルギー性喘息、鼻炎、
結膜炎、アトピー性皮膚炎罹患者が多くなっています。アレルギー疾患の原因のすぺてがこ
のダニ類によるものではありませんが、ダニが多数発生する場所に居住すると発症しやすい
傾向があります。
 また、このダニ類は、生虫、死虫、糞のいずれもがアレルゲンになります。
 家屋内から検出されるダニ類の70%以上をこのグニ類が占めることと、糞由来のアレルゲ
ンがダニ虫体よりも形態が小さく気管に入りやすく、虫体よりも量が多く、アレルゲン活性
が高いことから、家屋内で検出されるダニの中では最も注意を要する種類と言えます。
 (2) ミナミツメダニ
 このダニは8〜9月に異常発生し、人を刺します。吸血はしませんが、人の体液を吸いま
す。新築後5年未満の家屋の畳やウール絨毯に生息していますが、5年を経た家屋でも、冬
季の結露の状態によっては翌年の夏期に被害が出ることがあります。
 あとで述べますが、最近は化学畳が約65%を占めていることと夏期に低湿度の異常気象が
続いたことで、ツメダニ被害は減少しているようです。

(3) イエダニ
 ネズミに寄生して吸血するダニですが、人からも吸血するダニです。家ネズミ(クマネズ
ミ、ドブネズミ、ハツカネズミ)が人の居住空間に侵入し始め、しかも繁殖しているので、
イエダニ被害も増えています。
 ネズミは冬季にも多いので、被害は一年中続きます。冬季のダニ刺されはイエダニによる
ことが多いのです。

(4) トリサシダニ・ワクモ・スズメサシダニ
 野鳥に寄生し吸血しますが、人からも吸血します。野鳥が屋根裏、軒先、戸袋等に巣を作
り、雛の巣立ち後、被害が出ます (5〜6月) 。野鳥の多い公園、森林、大きな屋敷周辺に
被害が目立っています。

(5) ヒゼンダニ
 人に寄生するダニ類で、カイセン症を起こします。人の皮膚(角質)にトンネルを堀って
生息し、繁殖もします。
 特別養護老人ホームなどでこのダニの被害が頻発することがあります。

3。ダニの繁殖条件
(1) ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニ・ミナミツメダニの繁殖条件
【温度条件】20〜30℃でよく繁殖します (特に25〜28℃) 。冷蔵庫内 (4℃) でも湿度があ
れば2週間ほどは生息できますが、高温には弱いようです。
【湿度条件】 コナヒョウヒダニは相対湿度60%以上、ヤケヒョウヒダニとミナミツメダニ
は70%以上の相対湿度を必要とします。50%以下ではいずれも繁殖することができません。
55%ではヤケヒョヒダニとミナミツメダニが1ヵ月以内に死滅し、コナヒョウヒダニは死滅
するまで数カ月かかります。
 ただし、部屋全体の湿度というよりも、ダニ虫体周辺の湿度が問題ですから注意してくだ
さい。 

【餌】ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニは塵の成分であるフケ、アカ、食品の屑等に含
まれる不飽和脂肪酸を含有するものを食べます。
 ミナミツメダニは捕食性で、ダニ類(共食いもします!)やチャタテムシ(家屋内に激増
した昆虫で、食品害虫。カビも摂食。体長1mm) を好みます。

【産卵場所】家屋内のダニは背光性(暗いところを好むこと)で、虫体が小さいので畳表に
ある隙間でも潜ることができます。これらの習性や特性を生かして、畳、絨毯、寝具、衣類、
ぬいぐるみ等に潜って産卵します。
 ただし、寝具や衣類、ぬいぐるみなどは低含水量であるため、潜っても多くの個体が死ん
でしまいます。

(2) イエダニ・トリサシグニ・ワクモ・スズメサシダニ及びヒゼンダニの繁殖条件
 これらは吸血性のダニで、吸血できる動物の存在が必須です。
 例えば、イエダニなら吸血の対象はネズミですが、人も吸血します。野鳥寄生のダニ類も
吸血できる対象が存在すればよいのです。
 吸血は、ダニの全世代が行うのではありません。これまでの報告では、
 イエダニでは、
 幼虫(吸血せず)→前若虫(吸血)→後若虫(吸血ぜず)→成虫(吸血)
 ワクモの例では、
 幼虫(吸血せず)→前若虫(吸血)→後若虫(吸血)→成虫(吸血)
となっていますが、イエダニの幼虫は吸血するという報告が出てきています。
 一方、人寄生のヒゼンダニは人以外では繁殖できません。犬や猫に皮疹を起こしますが寄
生はできず、反対に、犬・猫に寄生するヒゼンダニ類は人に皮疹を発症させることがありま
すが寄生はしません。
4.防除法
(1) ヤケヒョウヒダニ・コナヒョウヒダニ・ミナミツメダニの防除法
 ダニの防除の基本は、上述した繁殖条件を1つでもなくすか、減らすことです。
具体的方法としては、住宅の構造を変える方法と、毎日の生活手段によって防除する方法の
2つがあります。

 1) ダニの繁殖の少ない住宅
 部屋毎の温度差を小さく保って結露を防ぎ、冬季の室内湿度を低く保つようにしましょう。
 間取りは、換気しやすく南北の間仕切りを少なくすると、各部屋の温度差が小さく保たれ
て結露が起こりにくくなり、冬季の室内湿度を低く保つことができます。

 換気回数が0.5 回/時間 (有効開口面積5cm2/u) 以下の家屋の場合は換気システムを導
入しましよう。
 床下の高湿度の影響を受けないように、床材との間には断熱材を入れるのが有効です。 
床に置く物の数は極力減らすように心がけましよう。
 床面積は、全面積から玄関、台所、トイレ、浴室、洗面所を除いた面積を居住者数で割り
算して10m3/人以上あるのが望ましいとされています。ダニ数を低く抑えられるからです。
 暖房機器はヒートポンプエアコン或いはセントラルヒーティングや床暖房が望ましい。 
いずれも室内を低湿度(50〜55%が望まれます)に保つことができます。
  ガスや石油の開放型暖房器具は、室内空気汚染の点でも、ダニの繁殖を押さえる面から
も好ましくありません。
 2)生活手段におけるダニの防除法
  畳表は仕事率150W以上の紙パック式掃除機で定期的に清掃を。
  ダニ数は100〜200 匹/u以下にすることが望まれます。この数値は、定期的に清掃を
行つている家屋での平均値です。
  清掃は、仕事率150W以上の紙パック式掃除機を使ってするようにしましよう。これ以下
のものではダニがとれないからです。
 畳の清掃は、清掃の回数が多いほどダニを減らすことができます。1回の清掃時間が20秒
/m2以内でも、1回の清掃で表面の8割以上のダニを除去することができます。また、北側
の部屋では畳の含水量が多いので、時々換気をする必要があります。
 藁床畳よりも化学畳のほうが侵入場所が少なく、含水量も低いのでダニ数を少なくするこ
とができますし、日光干しも容易でダニ対策上有効です。

 絨毯は敷き詰めずに置き敷にしましよう。
 絨毯は、アレルギーの方は使わない方がよいのですが、ダニ数を300 匹/u以下、糞由来
のアレルゲンを1000ng/u以下に保つことが望まれます。絨毯は、敷き詰めずに置き敷にし
ましよう。
 1回の清掃時間は20秒/u以上にしてください。また、裏側から叩いて表面から掃除機を
かけると、全ダニ数の3割程度まで除去することができ、コーナーノズルで丁寧に清掃する
と5割程度の除去が可能です。
 糞由来のアレルゲンの除去には、掃除機で除去する方法と水で清掃する方法がありますが、
丁寧な洗浄では約9割のアレルゲン量を除去することができます。 

 板間(フローリング)ではダニ数を少なくできます。
 板間(フローリング)では、ダニ数を10匹/u以下に、糞由来のアレルゲン量は5ng/u以
下に保つようにします。板間はダニが潜れず、繁殖条件も揃わないので、本来ダニ数は少な
いのです。掃除機で清掃後水ふきをすれば、ダニ数も
 アレルゲン量もきわめて少なくなります。
 寝具は、日光干しの後叩いて、さらに帰除機をかけましよう。
 寝具では、ダニ数を100 匹/u以下に、糞由来のアレルゲン量は1000ng/u以下に保つよ
うにします。
 寝具のダニ・アレルゲン除去は掃除機による清掃 (上限は清掃前の5割まで) と、寝具の
丸洗い (上限9割) があります。目光干しを1ヶ月続けても5割の減少が期待できます。 
日光干しをした後、寝具を叩くと一時的にダニアレルゲン量が増える現象がみられます。内
部のアレルゲンが表面に出てくるからです。寝具を干した後に叩くのであれば、叩いた後に
掃除機をかけで表面に出てきた分を除去しなければなりません。また、年に1回は丸洗いす
るのが望ましいことです。
 シーツやカバーは1週問に1回は洗濯をしましよう。ヒヨウヒダニは卵から幼虫になるの
に1週間かかり(25 ℃) 、幼虫になると糞をし始めます。しかし、洗濯をすればダニもアレ
ルゲン量も9割以上除去することができます。
 ベッドをお使いになっている場合は、電気敷毛布をシーツの下に敷き、朝起きたら電気を
入れ、夜寝る前に消す方法を続けると、ダニは乾燥によって生息しにくくなります。高密度
でシーツやカバーを作ってもよいのですが、吸湿性が悪いので、人に触れる部分には木綿の
シーツ等を用いるようにしたほうがよいでしよう。
2)イエダニ・トリサシダニ・ワクモ・ヒゼンダニ・スズメサシダニの防除法
 イエダニ防除はネズミの駆除から          
 イエダニの発生に対しては、一時的には殺虫剤の散布で収まりますが根本的にはネズミを
駆除しなければなりません。ネズミは1cm以上の穴から侵入しますから、まず家屋外側に通
じるそのような穴を塞いでおかなければなりません。
 また、夜間に生ゴミを戸外に出すとネズミを呼び寄せることになりますから注意が必要で
す。飲食店では、閉店吟に清掃するとネズミの被害を少なくすることができます。
 野鳥の寄生ダニは巣立ち後の巣の除去を
 野鳥の雛が巣にいる間は被害が起こることは少ないので、雛が巣立ったら、巣を除去する
のがよい方法です。除去する前に巣の周辺に殺虫剤を散布すると刺されずに作業をすること
ができます。

 カイセン症はヒゼンダニ対策を
 カイセン症は、ヒゼンダニで起こる感染症です。人に寄生しますので、次の4つの対策を
同時に行うことが必要です。
 @殺虫剤入り軟膏の塗布による治療
 Aシーツやカバー、下着、寝間着類を毎日加熱(5O ℃、30分以上) するか洗濯
 B布団に掃除機をかけ、落ちた虫体を除去
 C床面に殺虫剤を散布
  集団生活の場で多数の感染者を出すことがありますので、そのような揚合には、最寄り
の保健所などに相談するのもよいと思います。

5.まとめ
 ダニ数とダニアレルゲンの減少には、建築構造と生活手段によるものとの、2つの方法が
あることを示しました。
 建築構造に欠陥やダニの繁殖要因が多くあると生活手段を駆使してもダニ数は減りにくい
ので、新築や改築、新居の購入の時にはよく考慮していただきたいと思います。また、衛生
的な生活をするためには、日常の生活の中で、ダニの数を減らしたり、繁殖条件を除いてい
くようにずることが大切です。
 以下にその方法をまとめて示しておきましたので、参考にしてください。
 また、ダニでお困りの方は、保健所で相談に乗ってくれますので、連絡して検査や助言を
受けるのもよいでしょう。
−ダニ・ダニアレルゲンを減らす方法一
【住宅構造による方法】

 換気扇の設置 室内湿度が高くならないように設置する。室内の温度は変え
        ずに外気を導入できる換気扇がよい。
 床下換気   床材の下が気密化・断熱化されていない場合には床下の高湿
        度の影響を受けないように施工します。床下に20cmのコン
        クリートを打つと湿気とシロアリ対策になります。
 床 材    板、クンションフロアー等ダニが侵入できないような床材が
        よいでしょう。畳は、藁床畳よりも化学畳の方がダニ数を減
        らすことができます。絨毬は敷き詰めず、はずして定期的に
        清掃できるようにしましよう。
 間 取 り  一部屋を汰く取ると換気がやりやすくなります。また、南北
        の部屋を仕切らない方が北側の部屋の結露を減らすことが
        できます。
 床 面 積  全面積から玄関、台所、トイレ、浴室、洗面所を除いた面積
        を居住者数で割って10u/人以上が望まれます。
 暖 房    床暖房など、結露が発生しない暖房方法がよいでしょう。
生活手段の励行
 乾燥 換気    換気しないと外気より5〜20%室内湿度が高くなります。
    冷暖房器  室内乾燥が大切。 「ドライ・送風」は便利。
    除湿器   留守中に使うと有効。
    除湿剤   小物の防ダニには便利。

 加熱 布団乾燥機   接触部分は5O℃になり、殺ダニ可能。
    電気毛布    8段階の4のレベルでも数日でチリダニが死滅。
    電気カーペット 加温により殺ダニ可能

 除去 掃除機   ダニ・アレルケン除去率には眼界があります。
    洗濯機   アレルゲン除去率は高い(糞は水溶性)。
    分割布団  布団がファスナーで分割でき洗濯可能。
    空気清浄機 ファン・フィルター式はやや有効。
    ぬいぐるみ 洗えるぬいぐるみがあります

 侵入防止 高密度繊維−ダニ・アレルゲンが侵入できないほどの繊維密度で、
            シーツ、カバー、布団側地、ぬいぐるみ等があるが
            市販品の一部には通気性に差がみられます。
 忌避   防ダニ綿、毛布、絨毯−ダニを寄せ付けないものだが、効果が持
                 続する商品は少ない。長期毒性の心配もある。

(厚生省の「快適で健康な住宅に関する検討会議報告書」居住環境におけるダニ対策ガイドライン)                                                                    名古屋市生活衛生センター


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