スズメバチの生態と刺傷被害



 1  人をさすハチとは
   細腰亜目の有剣類に属するハチが人を剌すことがありますが,特に間題となるのは次のような種類です。
  これらは全て社会生活を営なんでいます。
                    @ーつの単位とした集団生活
          社会生活とは?   A機能の分担
                    Bカ−スト分化
  剌傷被害が問題となるハチの種類は、ススメバチ亜科の3属16種とアシナガバチ亜科の3属11種とミツバチ亜科の1属
  2種である。
2 日本のスズメバチ
  日本には3属16種のスズメバチが生息しています。日本に生息しているスズメバチ属7種のうち、コガタ、キイロ、ヒメ、
  モン、オオスズメバチの5種が、西南日本暖地の低山から平地にかけて局所的に生息しています。

3 都市で多発するスズメバチ
 1970年頃から, 周囲に丘陵地や山地をもつ全国各地の都市やその周辺で、大型のスズメバチの仲間が多発するようになりまし
  た。その結果、秋口を中心に剌傷被害が増加し大きな問題となっています。
  近年、都市部において増加傾向が著しいのはキイロスズメバチ(以下キイロ)とコガタスズメバチ(以下コガタ)の2種で
 すが、東海地方では名古屋市を始めとして、コガタが圧倒的な優占種となっています。

 都市で多発し、問題となっているコガタとキイロの共通点と相違点(松浦1992より)                    
  _______________________________________
          |   コガタスズメバチ        キイロスズメバチ   
  幼虫の餌資源  |      幼虫の餌に各種の昆虫やクモなどを狩る何でも屋    
  営巣 期 間  |       晩春から初冬まで営巣を続ける長期営巣型     
  新女王の産出  |         新女王の産出のピークは10月頃       
  新女王の越冬場所|            主に朽ち木の中           
  分    布  | 北海道から九州までの各地に分布し、幅広い気候適応力をもつ     
  営巣規模    | 小規模営巣型          |大規模営巣型        
  営巣場所    | 木の枝が主でいずれも開放空間 |人家などの建造物の内外   
  働き蜂の攻撃性 | 接近に対する攻撃性は弱い   |接近に対する攻撃性は強い  
  働き蜂の寿命  |    平均で約25日      |   平均で約13日     
  働き蜂の行動範囲|      1Km以内      |   1〜5Kmと大きい   
  働き蜂の活動性 |有休多憩型 (朝夕に活動のピーク)|    不眠不休型     
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都市での多発の原因
 都市でスズメバチが多発している理由として、次の7点が挙げられます.
 @丘陵地の宅地化 (スズメバチと人間の生活圏の重なり) 
      住宅空間の狭さも原因
 A山林における生息適地の減少
      雑木林の荒廃,植林
 B都市緑化の推進
      餌資源の増加
 C衛生害虫に対する住民の意識変化
      不快感,恐怖感の増加
 D殺虫剤の使用の変化
      散布の減少,有機塩素型殺虫剤の使用禁止
 Eジュースなど空き缶の放置
      天然甘味料の使用
 F天敵オオスズメバチの不在

4 スズメバチ類の発生状況と生活史
  全国的なスズメバチの発生動向は,地域や年次により異なっていますが,各地とも2〜3年周期の不規則な増減を繰り返し
 ながらも増加傾向にあります。
  名古屋市では、1983年から生活衛生センタ−で専門職員が駆除を実施しており、ここ数年では 600〜80件近くの駆除件数で
 ある。
  スズメバチは,本州の西南暖地では4月上匂から6月上旬に、キイローオオーモン−コガターヒメの順で越冬女王が出現し
 営巣を始めます.営巣期間は短期営巣型のヒメは約4カ月と短く,キイロは約8カ月に及びます。他の3種はキイローオオー
 コガターモンー ヒメの順となります。
  名古屋市におけるコガタスズメバチの生活史を見ると、6月頃に女王バチと働きバチが共同で巣作り・産卵・幼虫の世話を
 する。8月〜10月になると、働きバチがどんどん増え、巣もお大きくなる。巣の防衛本能が強くなり、巣に近づく人などへ攻
 撃する。11月を過ぎると、巣の中のハチは死んで巣はからになる。この巣は翌年使いません。

5  スズメバチ類の営巣場所
  スズメバチ類は種により営巣場所が異なっています,地上の開放空間を好んで営巣する種と,地上または地下の遮閉空間に
  営巣する種の2つに大別されます.コガタは開放空間に営巣し,オオ,モンおよびヒメは遮閉空間に営巣します。キイロは
  そのどちらにも営巣します。
 営巣の高さの平均は,高い方からキイロ>モン>コガタ(家屋)>コガタ(樹木)>ヒメ>オオなっています。
  営巣場所別では、軒下にはコガタ、キイロスズメバチ、天井裏・戸袋にはヒメ、モン、キイロスズメバチ、木の枝・生垣の
 中にはコガタススメバチ、土の中にはオオスズメバチが生息しています。

6 刺傷被害の発生状況
  @ハチはなぜ刺すか?
   スズメバチ類は,外敵から巣を防衛する手段として攻撃性が発達しています.そのため巣を剌激したり、巣に触れたりす
  ることにより剌傷被害が発生します。
   スズメバチとミツバチの毒針の構造は異なり、ススメバチは毒がある限り、何回でも刺すが、ミツバチの毒針は逆トゲが
  あり、1回刺すと死んでしまう。
  A種による攻撃性の違い
   種により攻撃性は異なっています.オオは世界最大のスズメバチで,最も攻撃性が強く,次いでキイロの順となっていま
  す.秋口に集団剌傷被害の原因となるのも主にこの2種類です。毒量は体の大きさとは関係なく攻撃性の強さと比例してい
  ます。
   体の大きさは、オオ ーヒメーモンーコガターキイロの順である。
   攻撃性・毒量は、オオ>キイロ>モン=>コガタ>ヒメの順である。
   剌傷被害は8月〜10月の3ヶ月間に大半が発生しており,中でも8月と9月に集中している。剌傷被害の発生時期は種に
  より違いがみられます。剌傷被害の発生はコロニーの発達状況とよく一致しており、いずれの種も巣が大きくなる時期ほど
  危険です。原因別にみた刺傷被害の発生状況では、コガタは剪定中・巣に触れが多く、キイロは、近くにいてが多かった。



7 ハチに刺されないためには
 1 被害を未然に防ぐ
 (1) スズメバチの生態をよく知ることが大切です。
  ・ どの季節が危険性が高いか?
    刺咬被害は、8月〜10月に大半が発生している。
  ・ どのような動きに反応するか?
    横の動きに敏感、縦の動きに鈍感。後ろに静かに下がった方が良い。
  ・ 攻撃を受けやすい色彩と身なり
    どんな色やにおいが危険か?
    黒い色が危険、白が安全。
 (2) 作業に懸かる前,作業中は常に周りの状況によく注意を払いますしょう.
  ・近くをハチが多数飛んでませんか?
  ・周辺を大きな羽音をたててハチが飛び回っていませんか?
    巣に数mから10m位の範囲に近ずくと、警戒(威嚇)行動をとる
      おどしと攻撃  
        1 巣への接近に対する警戒
        2 巣への接近に対する威嚇
        3 巣への間接的刺激に対する攻撃   
        4 巣への直接的剌激に対する攻撃   

■具体的には次のような点に注意しましょう!

 1 巣に近づいたり,いたずらをしてハチを剌激しないようにしましょう。
 2 庭木の手入れをする時には,ハチの巣がないか注意しましょう。
 3 洗濯物にハチがまぎれこんで剌されることがあるので注意しましょう。
 4 ハチが餌を採っているところでは,剌激しないようにしましょう。

2 刺されたあとの対処法
 剌された後のハチ毒に対する反応は,個人差が大きく、一般には激痛と局所の腫れ、やがてかゆみにかわっていきます。ハチ
 の種類,毒の量,剌傷部位,体調等により反応が異なるとがあります。
 ハチ毒に対するアレルギー体質の人は,剌されるとショック(即時型反応)を起こし、最悪の場合は死に至る場合があるので
 注意が必要です。ショックは極めて短時間で起こります。症状としては、2回目以後のハチ刺されのときに、のどがつまった
 ようで息苦しい、手足がしびれて力が抜ける、目が見えない、耳が聞こえない、意識が朦朧となるなどです。 もしハチ刺さ
 れたら
 ●刺された場所から、安全な場所に避難する。
        ↓
 ●傷口を水で洗い流す。           ハチ毒に過敏な人は、短時問で
 ●患部に抗ヒスタミン軟膏を塗る。       アナフィロキシ−ショックと呼ばれる   
(アンモニアは効果がありません。)   症状を起こし、心不全や呼吸不全で死
        ↓               にいたる場合もあります。
 ●症状がひどい場合は、速やかに医師の診察
  診察を受ける。

  「ハイリスクの人とは」
   ・以前にハチに剌されたとき症状が重かった      
   ・抗体価が高い
   ・4O歳の男性     

8 ま  と   め
  ハチとの共存は可能か?

          益虫・害虫・ただの虫
          人間を基準にした虫の見方で、極めて便宜的なもの
          視点が変われば、分類も変わる

    人もみんなの仲間      生き物地球共生系

(名古屋市生活衛生センタ−・スズメバチ教室資料/97年9月19日)

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