平成9年名古屋市環境衛生職員研修会・文化部講演会で村松學氏(武蔵野女子大学)が
講演された内容を抜粋して紹介します。
…1992年省エネ基準が改正され、住宅の断熱性を追求し、日射の遮蔽性と気密性の向
上した住宅が数年前からでき、この住宅で昨年から様々な問題が発生している。この
基準によると、住宅の気密化に関しては、隙間住宅、在来住宅、やや気密住宅、気密
住宅、高気密住宅の5つに分けられる。
隙間住宅というのは昔からの日本家屋で、木枠で風通しがよい住宅。
在来住宅というのはアルミサッシが普及し始めた頃の住宅。
やや気密住宅、気密住宅、高気密住宅は今建てられている住宅である。
30坪位の住宅を想定した場合、隙間住宅では開口直径40cmの円の隙間が開いてる
ことになり、ここでは暖房設備として局所方式の開放型石油ストーブの使用が認めら
れる。在来住宅では直径30cmの円の隙間が開いていることになり、局所方式の暖房
でもよいが排気だけは煙突をつけなさいということになり、やや気密住宅では直径23
cmの円の隙間が開いていることになり、外気も取り入れるFF方式の暖房設備が必要
になる。
気密住宅になると隙間は直径17cmの円となり、暖房設備はガス等を使わない電気に
よるセントラル方式のものが必要になり、高気密住宅になると隙間はさらに小さく直
径13cmの円となり、全室の換気設備が必要となり、換気は24時間換気が必要となる。
しかし、電気代を節約するため換気設備のスイッチを切ってしまっている住宅も見
られ、室内から汚染物が外に出ていかないという事例も見られる。このため、最近で
は換気設備のスィッチを隠してしまっている住宅も建られている。また、換気設備に
ついては、各居室に従来型の軸流式のファンをつけても冬は寒いから、夏は暑いから
使わないということになるので、熱交換型換気扇をつける必要がある。
最近建てられる住宅は、1時間当たり0.5 回の換気回数を目標としているが、実際
にはもっと少なく0.1回位で、10時間位しないと空気が入れ替わらない。このため、
24時間の換気と各居室には熱交換型換気扇をつける必要があるが、中小の施工業者で
は、熱交換型換気扇をつけないことが現実にある。このように、住宅の気密化が進む
につれ、住宅と設備がアンバランスになってきていることが問題だと思う。
…それで、なぜ室内で化学物質が発生するか。建築工事の際、昔は天然の接着剤、に
かわやカゼインを接着剤として使用していたが、今は熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、
その混合型のユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノ一ル樹脂を使い、合板や家具などが
作られ、この接着剤の中にホルムアルデヒドが入っている。ホルムアルデヒドを使う
ことにより接着剤として長持ちさせることができ、安価な接着剤が出来上がる。この
ようにホルムアルデヒドの使用は避けることができない。
ところが、室内で発生するホルムアルデヒドの除去となると困難である。ホルムア
ルデヒドは合板などからゆっくり室内に放出されるため、ベークアウトとして室内を
30〜40℃に暖め、これを放出させようとしても、VOC(揮発性有機化合物)の放出
ほどの効果はみられない。ノーホルムアルデヒドの合板はまず不可能である現状では、
これをいかに低濃度にするかである。
厚生省の「快適で健康的な住宅に関する検討会」は、ホルムァルデヒド室内濃度を
0.1 mg/立米(0.08ppm)とする基準等を定めた報告書をまとめた。私のこれまでの測定
結果では、新築時は0.5 〜1ppmと非常に高濃度であり、この基準以下まで減少するの
に約3年かかり、その後ほとんど減衰しないという結果であった。今回の基準はほぼ
リミットと言える。また、新築住宅のホルムアルデヒド室内濃度を1時間ごとに測定
すると夜間上昇し、昼間減少することが分かる。これは昼間は窓を開け、換気量が多
いことによる。しかし、この基準には、測定方法が示されていない。30分値を基準と
しているが、時問変動の多いホルムアルデヒド室内濃度のどこの時間帯を取ればよい
のか分からない。報告書ではVOCについては、指標として重要だと言っている。確
かにVOC濃度は、測定方法たとえば測定で使用する吸着剤の種類によってかなり違
うが、WH0が示しているようなTVOCとして300μg/立米以下程度の基準値を
決めるべきと思う。化学物質の室内濃度指針値については大変重要なので今後決めて
いくべきだと言っているだけである。また、化学物質過敏症についてもそういう問題
もあると言っているたけであった。衣料品等の家庭用品の規制では、化学物質名、基
準が明確に示されている。室内汚染物質についても決めるべきと思うが、測定方法が
示されないような基準の設定では疑念の念を抱く。
健康住宅研究会(通産・建設・厚生省、建材・住宅産業メーカーなど)のガイドラ
イン中間報告がでた。平成10年3月に正規のものが出ることになっている。内装材
分科会、木質建材分科会、設計施工分科会の3つの分科会で検討され、優先的に取り
組む物質としてホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、木材保存剤(防腐剤、防虫
剤等)、可塑剤、防蟻剤の6つを挙げている。また、衣類の防虫剤として使用される
パラジクロルベンゼンも注意すべきとしている。さらに住宅の引き渡し時に、住宅と
一体のものは業者が責任を負うとして、各種の建材、内装材、塗料、接着剤などにつ
いては、これらの物質の発生に責任を持つこととし、具体的にはホルムアルデヒドに
ついては、引き渡し時までに0.1mg/立米以下になるまで下げていくべきと言っている。
東京の大手のマンション業者では、すでにホルムアルデヒドが0.1mg/立米以下になる
まで換気をしたり、ヒーティングをしたりしてから引き渡しを行うと言っている。ま
た、住宅産業界の方では省エネルギー機構から来年、設計マニュアル、ユーザマニュ
アルがでる。このような設計サイドの取組みに加えて、建材、内装材等の製造業界の
取組みが望まれる。 現在の健康・疾病は、慢性疾患・成人病の時代と言われ、複数
の原因が絡んで複数の疾病(症状)が発生すると言われている。したがってーつの原
因を取り除いても、その疾病の改善に繋がらない。室内から化学物質が測定されたか
らと言って、それが悪いと言うのではなく、生物的なもの、栄養的なものも考えに入
れ、全体を見据えて対処しなければならない。
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