都市の害虫
                                
 近年、私たちの生活レペルが向上し、生活環境が著し<改善されたことにより、伝染病の発生は激減しました。                 
 その一方、都市周辺地の都市化に伴い、田畑はもとより野原、林、小川、ため池あるいは森が開発され、どんどん消滅してきました。そして、そこに適度なバランスを保ちつつ生息していた昆虫や魚あるいは鳥たちは生息場所を失って、多<の種が消滅したり生息域を著しく狭められました。
 逆に、新しい環境にうま<適応できる種が入ってきて、都市を主な生息域とするような場合も見られます。これらは、都市型昆虫と呼ばれています。今回は、直接人に被害を与える昆虫など、いわゆる「毒虫」のうち、都市で見られるものをいくつかご紹介します。

【ガ 類】                          
 ガの仲間には人に皮膚炎を起こすものがいます。ガの幼虫は体に多くの毛が生えている、いわゆる「毛虫」で、この毛の中に毒針毛を持つものがいて皮膚炎の原因となります。都市や都市周辺で発生する主なものに、ドクガ、チヤドクガ、ヒロヘリアオイラガ、タケノホソクロバ、ウメスカシクロバなどがあります。       
チヤドクガは庭園や街路のサザンカやツバキによく発生します。ドクガは、街の中心よりも郊外の林縁部など、生態系が不安定になったような場所で大発生することがあります。ヒロヘリアオイラガは外国からの侵入種で、街の中のサクラ、モミジなど多くの樹種に発生します。もともと日本にいる近縁のイラガヤアオイラガなどを駆逐して、街路樹などにその勢力を広げています。タケノホソクロバは庭園のササ・タケ類に、ウメスカシロクバはサクラやウメに、いずれも手入れの悪い樹勢の衰えた木に発生します。
 被害は毛虫に触れなければ起きませんが、チャドクガやドクガは、成虫が毒針毛を付着させているので、これが室内に入ってきたり、またこれらの脱皮殻の毒針毛が飛散したりして、広い範囲に被害が発生することがあります。

【スズメバチ類】
 最近は、都市でススメバチが多く営巣し、人が刺される被害が増えてきています。都市で見られるスズメバチは、ほとんどがコガタススバチかキイロスズメバチで、この二種も都市環境にうまく適応できた種であるといえます。天敵であるオオスズメバチが都市化に適応できす激減したことや、成虫が本来のえさである花の蜜や樹液のほかに、人間の捨てた缶に残つているジユースなどを利用できる性質を持っていたことなどが生息に有利な条件となつたわけです。                 
 これらのススメバチは、越冬した新女王が、春になるとたった一匹で巣作りを始めて、秒には数百から時には千を越える働き蜂を持つ大きな巣になるのです。植木の茂みなど、身近な場所にあるものは巣が小さいうちに取り除<ようにします。
    
【アリガタバチ類】                  
アリガタバチ類は小型のハチで、成虫になつても翅のない種が多く、外観はアリに大変よく似ています。偶然接触した人を刺し、被害を与えます。名古屋市内でよ<見られるアリガタバチは、ハマキアリガタバチ、シバンムシアリガタバチ、クロアリガタバチなどで、いずれの種も他の昆虫に寄生して育ちます。ハマキアリガタバチは、ハマキガの幼虫に寄生する野外性の種です。シバンムシアリガタバチとクロアリガタバチは家屋内で発生する種で、前者はワラや食品など、植物性の乾物に発生するタバコシバンムシやジンサンシバシムシの幼虫に寄生します。後者は、建材 (主にスギ材)に発生するヒメスギカミキリの幼虫に寄生します。                
【ムカデ】
ムカデ咬症の原因となるのはオオムカデの仲間で、トビズムカデ、アオスムカデなどががあります。       ムカデは本来森林中の生物で、落ち葉層や朽木の下などに棲息し、主に夜間活動して昆虫などの小動物を捕って食べています。都市化によって棲息場所はどんどん狭められていま
すが、街中のちょっとした樹木の茂みなどで頑張つて生きています。また、住宅地が郊外へ広がった結果、林に隣接したような環境の住宅などでは、夜間に迷い込んだムカデに人が咬まれることがよ<あります。咬まれると激しい疼痛を起こしますが、致命的なことはまずありません。
                                                                      (「名古屋市衛生研究所だより,96」より)

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