仕事で一日の大半を過ごす事務所や日ごろ利用しているデパートや映画館などのビルでは、空気や水の衛生は、どのように確保されているでしょうか。今回は、「ビルの衛生」にスポットを当ててお話しします。
1 ビルの管理
延べ床面積が3000u以上で、事務所など多くの人が使用するビルは「特定建築物」と呼ばれ、「ビル衛生管理法(正式には、特定建築物の衛生的環境の確保に関する法律)」により室内の空気や飲み水を衛生的に管理することが義務づけられています。
(1)空気
室内の空気環境には、次の6項目の管理基準が決められています。@温度ー17〜28度、@湿度−40〜70%、B気流ー0.5m/秒以下、C炭酸ガスー1000ppm以下、D一酸化炭素ー10ppb以下、E浮遊粉じんー0.15mg/m3以下です。これに加えて、「シックハウス症候群」の原因となる揮発性有機化合物のホルムアルデヒ
ド等の基準追加も考えられているようです。
(2)水
一般に、ビルの飲料水は、貯水槽を通じて給水されています。貯水槽以下の水は、ビル所有者等の責任で定期的に貯水槽の清掃や水質検査を実施する必要があります。
これ以外にも定期的にネズミ衛生害虫の防除・排水糟の清掃も義務づけられています。
2 「住まいと健康」問題の特徴と日本の特殊性
昨年の名古屋市環境衛生監視員研修会の講演会で国立公衆衛生院の鈴木晃先生が、次のようなお話をされました。
……住まいと健康」という問題を考える場合、「オフィスビルと健康」との相違を考えると「住まいと健康」問題の特徴が浮きぼりになる。健康という面から考えると、住まいは新生児から老人まで幅広い健康状態の人が利用しているが、オフィスビルは基本的に健康な人が利用している。またオフィスビルには管理する専門家がいるため、健康に配慮した基準(ビル衛生管理法など)を設定すれば、コントロールできる専門的な技術が存在する。一方、住まいは管理するのが住民自身であるため、基準を設定しても守られる保障がない。住まいでは専門的な管理技術を前提にせずに居住者の健康を保障する仕組みを考える必要がある。これは日本の特徴的な問題である。……
日本では1970年に「ビル衛生管理法」が制定され、欧米で社会的な問題となったシックビル症候群が日本では問題にならなかったと言われています。しかし、逆に欧米にある「住居法」を持たない日本は、住宅を個人の責任にして、公共は不介入という立場をとったことで様々な住まいの問題が発生したと言われています。シックハウ
ス症候群に見られるように遅まきながらも国がガイドラインを設定し、建築段階からの規制も始まろうとしています。保健所は「住まいと健康」問題について相談、情報提供、関係機関との連携等「住まい方の支援」の役割が求められています。