Synchronicity (これは一応フィクションです) ------------------------------------------------------------ つまりまず同時というのを定義しなければならないのだよ 1時間、1日、1月、1年、10年、100年後に どれであっても地球の歴史から見ると同時と言うこともできる 地球の歴史ですら宇宙の歴史から見ると同時と言えるだろう ------------------------------------------------------------ 「シンクロニティってあると思いますか。」 「シンクロニシティかい。どっかの哲学者が使った言葉だったかな。  うーん、哲学はあんまりやらないんだけれどなぁ。まぁ、いいや。  僕の知っている範囲で、になるよ。それでもいいかい。」 「かまいません。」 「僕が知っているのはグリセリンの結晶化の話だ。」 「樽の中でグリセリンの結晶化が起きたという事件ですね。」 「それまでどうやっても液体だったグリセリンがその結晶を加える  ことによって結晶化に成功したというやつだね。しかもこの結晶  化の成功以後はわざわざ結晶を加えなくてもグリセリンの結晶が  直接作れるようになった。1つの結晶の存在が他のグリセリンを  結晶化に導いたわけだね。飽和溶液に結晶を加えると結晶が成長  するという現象自体は珍しくない。ここで問題になるのはそれま  で存在しなかった結晶の存在が他のグリセリンを結晶化に導いた。  それも直接的な接触はなく、空間的距離がある場合でだ。」 「空間的な距離を越えて共鳴のような減少が起きていたのでしょう  か。そこが一番不思議です。」 「どうなんだろうね、実際のところは。少なくとも僕はこの目でグ  リセリンの結晶見たことないしね。氷で冷やしたことあるけれど  それくらいでは結晶にならなかった。もっと冷やせばできるのか  もしれないけれど。」 「それでは答えになってないです。」 「まぁ、その通りだね。じゃぁ別の話もしようか。生物の体内では  タンパク質がいろんな働きをしているのは知ってるね。」 「酵素とかですね。」 「そう、酵素、これは触媒のことだけを呼ぶ。酵素だけがタンパク  質ってわけではないけれど。この酵素はネットワークのようなも  のを作っている。あるものとあるものがくっつくことによって次  々と反応が進むわけだ。あるタンパク質と別のタンパク質がくっ  つくかを調べることはこのネットワークを調べることに繋がる。  そこで昔からいろいろな方法が取られている。ある実験で結果が  出れば結合が確かめられるというものが確立していた。その実験  は世界中で使われていて次々とネットワークが調べられていた。  しかし、あるときの実験ではAとB二つのタンパク質が結合する  ことがどうしても確かめられない。他の状況証拠でAとBは結合  するらしいといことはわかっていた。さて、君ならどうする。」 「・・・降参。あきらめます。」 「この人たちは降参しなかった。新しい検出方法を考えたのさ。そ  してこの新しい検出方法でAとBの結合確認に成功した。」 「それとシンクロニティとどう関係があるのですか。」 「この新しい検出方法で成功した後、元の昔の実験を行なったら、  それまで一切出なかったのにAとBの結合することが確認された。  これもシンクロニシティと呼べないだろうか。新しい方法で確認  された後には昔の方法でも確認されたということだから。」 「グリセリンの場合と同じだと思います。」 「こういう話もある。ある研究をずっと何年もやっているいわゆる  ベテラン研究員がある物質を単離しようとしていた。でも、全く  成功しなかった。作業自体には問題がないはずなのにね。その研  究所に新しい人が来ることになって、その人は本当に全くの新人  で1から実験を学び始めたくらい。そこのボスがその新人にベテ  ランがやっていたことを引き継がせた。」 「ベテランが失敗していたことを新人にやらせるのですか。うまく  いかないと思うのですけれど。」 「ただボスがしたのは"やれ、絶対できるから"と言うだけ。ベテラ  ンがずっと失敗してきていることは知らせなかった。ある意味無  責任だよね。でも新人は成功しちゃったらしい。この手の新人が  やったら成功したというのはわりとよく聞く話。」 「ベテランの人の立場がないような気がします。」 「この新人さん大成功はシンクロにシティに一石を投じられないだ  ろうか。ベテランが失敗して、新人が成功した。この違いは何だ  ろう。」 「経験の差でしょうか。普通と反対な気がしますけれど。」 「そう、経験だろうね。この場合は先入観という言葉が良いかもし  れない。ボスの"絶対やれる"という言葉を信じた新人の方が先入  観が少なかったんだろうね。もちろんベテランと新人の少しずつ  実験の作業に違いがあった可能性もあるけれど。この手の話、新  人が成功するとベテランも成功するんだよね。」 「今度はベテランが成功すると信じられるようになったと。」 「そうなんだろうね、多分。一応フォローしておくけれど経験が多  いほど失敗が多いわけじゃないからね。ベテラン実験者というの  はちゃんと結果を出す人のほうが多いから。この場合は一人でず  っと実験を続けたのが問題なんだと思うね。それが普通なら良い  方向に働くものが先入観の弊害へと変わってしまったのだろう。」 「一人で全部やることが必ず良いとは限らないのですね。」 「逆に新人の成功した後ベテランが成功したのも先入観のおかげと  言える。成功を見ているから成功できた。これと同じことがグリ  セリンに関してと結合実験に関して起きたんじゃないかな。これ  がシンクロニシティに対する僕の意見。これだと全く情報が伝わ  ってないのに同時期に成功したという話には答えてない気もする  けれど。」 「そうです。それはどうするんですか。」 「だから始めに知ってる範囲って言ったよ。ただ、現代では人に関  しては情報が伝わっていないという状態は難しくなってきたね。  世界の情報の流れがずいぶん決まってきてるから、テレビにしろ  本にしろ、ネットにしろね。情報があふれちゃって先入観の塊に  なってきてる気がする。うまく情報を処理できるようにならなく  ちゃならないのかな。」 「結局、シンクロニティがあるのかどうかわからないじゃないです  か。」 「えっと、だまってたけれどシンクロニシティね。」 「あ。」 「じゃ。」 「逃げないでくださいよー。」